News・Blog

令和8年6月議会(一般質問)

2026年6月13日土曜日活動記録

▼3月8日(月)、大垣市議会にて一般質問に登壇させていただきました。毎回、長文で恐縮ですが、全文を掲載させていただきます。 

【今回の一般質問】
・大垣城の耐震性等について
・電子投票の導入について
・電子回覧板について
・文化の担い手支援について


【大垣ケーブルテレビ放送日】
 3月13日(土) 9 :00~
 3月15日(月) 16 :00~ (再放送)

【YouTube】
⇒⇒⇒
https://youtu.be/LfJBWuVkVls?si=wugZATs8GFGnIOw0

【バックナンバー】
令和5年12月議会
令和6年3月議会
令和6年6月議会
令和6年9月議会
令和6年12月議会
令和7年3月議会
令和7年6月議会
令和7年9月議会
令和7年12月議会
令和8年3月議会

 
[一般質問 一回目登壇]

 ▼自民党緑風会の種田昌克でございます。
▼さて、大垣演劇鑑賞会の会員となって30年以上。これまで多くの舞台を観てまいりましたが、その中でも特に心に残っている作品のひとつに、劇団民藝の『グレイクリスマス』があります。奈良岡朋子さん主演の名作であります。この『グレイクリスマス』という題名は、単に「灰色のクリスマス」という情景を表したものではありません。戦後の混乱した時代の空気、そして民主主義の原点を問いかける意味が込められた題名であると、私は受け止めています。作品の中に、印象的な言葉があります。「ゴミ溜めも焼け跡も、汚いものもみんな雪が隠してくれるクリスマスをホワイトクリスマスといいますが、雪の降らない、美しくないクリスマスをグレイクリスマスと言います」。この「グレイ」という言葉は、景色の色であると同時に、時代の色でもあります。敗戦、占領、接収、生活苦、闇市、制度の変化、そして朝鮮戦争へと続く激動の時代。白か黒かでは割り切れない、不安定で、揺れ動く、まさに「灰色の時代」でありました。
 昭和20年の大垣も、まさしくそうした灰色の時代の中にありました。空襲により町は焼け、大垣城も失われました。しかし、それでも人々は立ち上がり、大垣のまちは復興していきました。その原動力は、もちろん市民の努力であり、行政の復興策であり、経済の再建でありました。しかし私は、そこに文化芸術の力も大きく働いていたのではないかと思います。井上ひさしの音楽劇『きらめく星座』では、ジャズなどを聴かせる小さなレコード店を舞台に、昭和初期の流行歌である「青空」「一杯のコーヒーから」といったメロディーが舞台を盛り上げます。私はこの作品から、苦しい時代の中でも人が前を向いて生きていく力を感じることができましたし、実際に、戦後においては、「リンゴの唄」「東京ブギウギ」など歌や音楽、映画や舞台などによって、人々は、生きる力を取り戻していったのだと思います。文化芸術が持つ力にほかなりません。では、令和の時代はどうでしょうか。私たちの暮らしは便利になり、豊かにもなりました。しかし一方で、先の見えない不安や、地域の課題もまた、私たちの前に横たわっています。そう考えますと、今の時代もまた、戦後とは違うかたちの「グレイ」を抱えているのかもしれません。だからこそ、地域の進む方向を考え、何を守り、何を変え、何を次の世代へ引き継いでいくのかを選び取る、私たち政治に携わる者、そして行政の役割は、ますます重くなっていると感じます。
 本日は、通告に従いまして、「大垣城の耐震性等について」、「電子投票の導入について」、「電子回覧板について」、そして「文化の担い手への支援について」、以上4件についてお尋ねいたします。
 
1件目「大垣城の耐震性等について」
▼今年3月22日、広島城の天守が閉城されました。広島城は、原爆により倒壊した後、戦後に鉄筋コンクリート造り、RC造で再建され、広島の復興を象徴する存在として長く親しまれてきました。しかし、再建から68年が経過する中で、コンクリートの老朽化や耐震性の問題などに直面し、現在の天守としての役割を終えることとなりました。このニュースは、単に広島城だけの問題ではなく、全国各地にある「戦後再建天守」が共通して抱える課題を示しているものではないかと感じております。実際に、全国には、戦後から高度経済成長期にかけて、RCなどで再建された天守が数多くあります。現在の大垣城天守は、昭和20年7月29日の空襲により焼失した後、昭和34年にRCで再建されたものであります。つまり、大垣城もまた、戦後復興の象徴として、市民に親しまれてきた天守であり、構造的にも広島城と近い時代背景を持っております。一般に、RCの建築物は、一定の年数を経ると、大規模な改修や更新が必要になると言われています。大垣城天守も、再建からすでに67年が経過しており、IS値はどのくらいなのか、また現時点で大きな問題が顕在化していないとしても、耐震性や機能面を含め、将来的には必ず向き合うべき課題があるのではないかと考えます。
 現在、大垣公園の再整備計画が進められておりますが、大垣公園の中心的存在である大垣城そのものの将来像についても、あわせて考えていく必要があるのではないでしょうか。大垣城は、単なる観光施設ではなく、関ケ原合戦において西軍・石田三成の本拠地となった歴史を持ち、城下町大垣のシンボルとして、市民にとって大切な存在であります。
 そこで、2点お尋ねいたします。
1点目。大垣城天守の耐震性や老朽化の状況について、現在どのような評価がなされているのか、お聞かせください。
2点目。将来的な改修、耐震補強、施設更新、あるいは大垣城全体のあり方を見据えた検討について、現時点でどの程度進められているのか、お尋ねいたします。
 
2件目「電子投票の導入について」
▼選挙は、民主主義の入口であり、住民の意思を行政に反映させる最も基本的な仕組みであります。しかし、社会全体でDXが進む一方、選挙事務については、今なお紙と手作業に大きく依存しているのが現状です。
 そうした中、令和2年3月、総務省は電子投票システムの技術的条件を見直し、市販のタブレット端末などの汎用機を用いた電子投票も実施可能となりました令和6年12月には、大阪府四條畷市、令和8年3月1日には、宮崎県新富町(しんとみちょう)において電子投票が実施されました。投票所では、タブレット端末の画面に表示された候補者名を、タッチペンで選択して投票する仕組みが採用されました。電子投票には、自書が困難な方でも投票しやすいこと、無効票や疑問票を減らしやすいこと、開票時間の短縮、職員負担の軽減、省スペース化など、さまざまな効果が期待されます。一方で、導入費用、セキュリティ、機器トラブルへの対応、高齢者への操作支援など、慎重に検討すべき課題があることも事実であります。
 そこで、2点お尋ねします。
1点目。選挙事務におけるDXの一環として、電子投票の導入について、本市はどのような認識を持っていますか。
2点目。四條畷市や新富町など、他自治体における近年の電子投票の事例を踏まえ、本市としても今後、導入の可能性や課題について調査・研究していく考えがあるのかお尋ねします。
 
3件目「電子回覧板について」
▼令和4年9月議会において、私は電子回覧板の導入について提言いたしました。あれから約4年。この間、社会全体のデジタル化はさらに進み、行政手続き、学校からの連絡、買い物、予約、災害情報の取得など、スマートフォンによる情報共有は日常生活の一部になりつつあります。最近では、本市も「ガキペイ」アプリを推進しておられます。電子回覧板は、情報を一斉に、迅速に届けることができます。紙の印刷や配布の手間を減らし、過去の回覧内容を後から確認することもできます。災害情報、行事の中止、不審者情報、道路工事、ごみ出しに関する連絡など、緊急性の高い情報については、紙の回覧板より早く共有できる可能性があります。本市においても、すでに自治会の現場で具体的な動きが始まっています。築捨町自治会では、この4月から中日新聞社の地域情報アプリ「ロークル」を活用した電子回覧板の運用を開始されました。築捨町自治会には約650世帯が加入していると伺っております。そのうち、すでに135世帯が電子回覧板の利用を始めているとのことです。また、紙の回覧板をなくすのではなく、当面は紙とデジタルを併用するハイブリッド方式で運用していくとのことでした。自治会は任意団体であり、市が上から一律に何かを押しつけるべきではありません。しかし一方で、自治会は、行政だけでは担いきれない公共的な役割を長年担ってきました。その自治会が、担い手不足、高齢化、加入率の低下、役員負担の増大に直面しているとき、市が「自治会は任意団体だから」という理由で距離を置くだけでよいのか。私は、そこが問われているのだと思います。電子回覧板は、自治会活動の負担を少しでも軽くし、情報共有を迅速にし、若い世代や共働き世帯にも参加しやすい環境を整えるための、有効な手段の一つであると考えます。
 そこで、3点お尋ねいたします。
1点目。令和4年9月議会において、市は電子回覧板について、大垣市連合自治会連絡協議会の意向を聞きながら研究していくと答弁されました。その後、市として、どのような調査研究、意見聴取、情報提供を行ってきたのかお尋ねします。
2点目。築捨町自治会が「ロークル」を活用した電子回覧板の運用を開始したことについて、市として把握しているのかお尋ねします。また、このような自治会発の取組と、紙とデジタルを併用するハイブリッド方式について、市としてどのように受けとめているのかお聞かせください。
3点目。今後、各自治会がそれぞれの判断で電子回覧板を導入していく場合、市内で複数のアプリや異なる仕組みが混在することも考えられます。市が特定のアプリを一律に指定する必要はないと思いますが、導入を希望する自治会に対して、導入事例の紹介、操作説明会、相談窓口の設置、モデル自治会での試行、導入マニュアルの作成など、市として側面的な支援を行う考えはないか、お尋ねいたします。
 
4件目「文化の担い手への支援について」
▼冒頭で紹介した大垣演劇鑑賞会は、6月21日の最終公演をもって、50年の歴史に幕を下ろすこととなりました。演劇鑑賞会は、会員が月会費を払い、年間5本前後の芝居を鑑賞する市民主体の組織です。これまで、地方ではなかなか触れることのできない良質な演劇を、市民に届け続けてきました。俳優座民藝こまつ座NLT無名塾など多くの劇団を、この大垣に招き、まさに「文化の担い手」として、本市の文化を支えてきた存在であります。私自身も、その恩恵にあずかってきた一人であり、今回の解散を非常に残念に、そして重く受け止めております。これは、単なる一団体の解散ではありません。地域における文化基盤の一つが失われる出来事であり、本市の文化のあり方を考えるうえでも、大きな節目ではないかと感じております。行政はこれまで、スイトピアセンターなどの整備を進め、文化活動の「場」は整えてきました。しかし一方で、その場を活かし、市民に文化を届けてきた担い手に対して、どこまで目を向けてきたのか。この点については、検証が必要ではないかと考えます。行政が自ら演劇を提供することには限界があります。だからこそ、市民主体の活動が果たしてきた役割は極めて大きかったはずです。
 そこで、3点お尋ねします。
1点目。大垣演劇鑑賞会の解散について、本市としてどのように受け止めていますか
2点目。演劇や音楽、美術をはじめとする文化芸術は、単なる娯楽ではなく、市民の心を豊かにし、感性を育み、時には人生観にまで影響を与える、いわば「心の栄養」であると考えます。本市は、文化芸術を市民生活の中でどのように位置づけていますか
3点目。長年、地域文化を支えてきた団体が会員減少や高齢化により存続できなくなる事態は今後も各分野でも起こり得ると考えます。文化の担い手の減少という課題についてどのように認識していますか。
4点目。行政が特定の団体を直接支援することには慎重であるべきと考えます。その一方で、文化の担い手を支える「環境整備」は行政の重要な役割ではないでしょうか。支援の仕組みを今後検討していく考えはありますか。
 
以上、1回目の質問とします。

 
【答弁】※ただいま作成中です
[市長] 「電子投票の導入」について
 ・

[教育長] 文化の担い手への支援について

 
[教育委員会事務局長] 文化の担い手への支援について

 
[] 電子回覧板の導入について


[一般質問 二回目登壇]
ただいまは、それぞれご答弁いただき、ありがとうございました。まず、 
◆1件目の「大垣城の耐震性等について」です。
 戦時中の空襲等で失われた天守のうち、実測図が残っているのは、名古屋城、岡山城、福山城、広島城、そして大垣城の5城しかないとされています。私はこの3月、これらのお城をすべて訪ねてまいりました。そのうえで強く感じたのは、大垣城についても、将来像の検討をこれ以上先送りできる段階ではないということです。現在、大垣公園等の再整備が進められておりますが、市民の方からは、「駅前通りなどから、もっと大垣城がよく見えるようになるとよい」といった声もお聞きします。過去の資料を調べますと、大垣城天守が昭和11年4月に国宝に指定された際にも、「駅前通りから見通せるよう、眺望を確保すべきである」という趣旨の意見が、当時の大垣市会で出されていたそうです。つまり、大垣城をまちなかからどのように見せるのか、そして城下町大垣の景観の中にどのように位置づけるのかという議論は、いま突然出てきたものではありません。実に90年近く前から続いてきた、長年の宿題であります。▼同時に、90年を経てもなお簡単に解決していないということは、それだけ多くの要素が絡み合う難しい課題であるということでもあります。だからこそ、今回の再整備にあたっては、単に公園をきれいにするだけではなく、大垣城をどう守り、どう見せ、次の世代にどのような城下町の風景を引き継ぐのかという大きな視点が必要だと考えます。舞台『赤ひげ』の中に、「人間の本当の価値というものは、何をしたかではない。何をしようとしているかだ」という言葉があります。行政もまた同じだと思います。過去に何をつくったかだけでなく、それをこれからどう守り、どう活かし、次の世代へどう引き継ごうとしているのか。その姿勢にこそ、行政の矜持が表れます。人の体も、建物も、症状がはっきり出てからでは、選べる手当ては限られてきます。大垣城についても、問題が起きてから対応するのではなく、今から状態を診断し、将来像を描いていく必要があるのではないでしょうか。
 
◆2件目の「電子投票の導入について」です。
 先般、横浜市で開催された電子投票に関する研修会に参加してまいりました。そこでは、宮崎県新富町の成功事例、岐阜県可児市の過去の失敗事例、そして電子投開票システムを開発した事業者の説明を聞くことができました。電子投票と聞くと、「本当に安全なのか」「高齢の方にも使えるのか」「トラブルが起きたらどうするのか」といった不安を持たれる方も多いと思います。私自身も、その点を確認したいと思い参加しました。その中で印象的だったのは、新富町における電子投票の満足度が95.2%に達していたという点です。実際に使った有権者の多くが、わかりやすい、投票しやすい、便利であると感じたことは、今後の選挙のあり方を考えるうえで大変重要です。また、投票に使用するタブレットはインターネットに接続しないスタンドアローン方式で運用されるとのことであり、外部からネットを通じて操作されるものではないという説明でありました。さらに、本年1月9日には、林総務大臣が電子投票について、全国的な実施機運の高まりに期待し、必要な支援を行うと述べています。加えて、2025年12月18日の省令改正により、導入経費に対する特別交付税措置が従来より約1.5倍に拡充されるとのことで、国も導入を後押しする姿勢を明確にしつつあります。
 私は、電子投票を単なる機械の導入とは考えておりません。これは、民主主義の入口である選挙を、これからの時代にどう守り、支えていくのかという問題であります。かつて栗原小巻さんが演じられた舞台に印象的なセリフがあります。「欲望という名の電車に乗って、墓場行きに乗り換えて、六つ先の極楽という駅で降りるのよ」と。人がどこから来て、どこへ向かうのかという、人生そのものへの問いが込められた言葉です。
 では、私たちのまちは、どこへ向かうのでしょうか。その行き先を決めるのが政治であり、その政治の出発点にあるのが選挙です。一票は小さく見えても、その積み重ねが市政の方向を決め、まちの未来を形づくります。投票率の低下、開票人員の確保、選挙事務の負担、ミスの防止、投票しやすさの確保は、これからの自治体が避けて通れない課題です。電子投票は、投票しやすい環境を整え、開票事務を正確かつ迅速にする有力な選択肢の一つです。ぜひ導入可能性を調査研究し、実現に向かって前進していただきたいと思います。
 
◆3件目の「電子回覧板について」です。
 長年、自治会は、地域社会を支える最も身近な基盤として、大きな役割を果たしてきました。しかし現在、その自治会が大きな岐路に立たされています。本市においても、活動の効率化や活性化に取り組む地域がある一方で、高齢化や担い手不足により活動の継続が難しくなり、解散に至った自治会の例も聞いております。そうした中、全国的には、自治会活動にデジタル技術を取り入れ、若い世代の参加促進につなげる取り組みが広がっています。自治会費をスマートフォン決済アプリ「PayPay」で支払えるようにした事例もあります。本市でいえば、「ガキペイ」で自治会費を支払うことができれば、住民にとっても役員の方々にとっても便利になるのではないかと思います。また、自治会とは少し異なりますが、長沢町の墓地管理組合では、お墓の管理料をコンビニで納付できる仕組みが導入されています。私自身も利用しておりますが、これは大変便利で、利用者にとっても負担の少ない仕組みだと感じています。こうした仕組みが自治会費などにも広がれば、住民にとっても、役員の方々にとっても、負担軽減につながると思います。ぜひ、市内各自治会の取組みを共有する仕組みを整えてはいかがでしょうか。
 本市の自治会加入率は約71%とお聞きしております。しかし、裏を返せば、すでに約3割の世帯が自治会に加入していないということでもあります。この傾向がさらに進んだとき、地域の情報伝達、防災、防犯、見守り、清掃活動、そして行政からの連絡体制は、どのように維持されていくのでしょうか。
 もちろん、自治会は任意団体であり、市が一方的に口を出すべきものではありません。しかし、自治会がこれまで地域社会の基盤として果たしてきた役割を考えれば、「任意団体だから市は関与できない」という一言だけで済ませられる問題でもありません。もし自治会活動が弱体化し、地域によっては自治会そのものがなくなっていった場合、住民生活にどのような影響が出るのか。また、市役所の業務や行政からの情報伝達に、どのような支障が生じるのか。ぜひ一度、具体的にシミュレーションしていただきたいと思います。
 そのうえで、私は、紙の回覧板を直ちに廃止すべきだと申し上げているわけではありません。大切なのは、紙とデジタルを併用しながら、できるところから負担を軽くし、情報をより早く届け、若い世代や共働き世帯にも参加しやすい自治会のあり方を考えていくことです。電子回覧板は、地域コミュニティを次の時代につなぐための、現実的で有効な手段の一つであると考えます。
 こまつ座の『頭痛肩こり樋口一葉』の中に、こんなセリフがあります。「だって世の中は、あれはだめ、これはするなというだけで、わたしになにもやらせてくれそうもないもの」。この言葉は、時代も立場も異なりますが、いま地域で新しいことに取り組もうとしている方々の思いにも重なるのではないかと感じます。電子回覧板に取り組もうとしても、「高齢者には難しい」「紙でないとだめだ」「トラブルが心配だ」と、できない理由ばかりが先に立ってしまうことがあります。もちろん、慎重さは必要です。しかし、慎重であることと、何もやらないことは違います。大切なのは、すべてを一度に変えることではありません。紙を必要とする方には紙を残し、デジタルを使える方にはデジタルを活用していただく。地域ごとの実情に応じて、自治会が自分たちに合った形を選べるようにすることです。「できない理由」を並べるだけでなく、「どうすればできるのか」を、自治会と行政が一緒に考えていく。電子回覧板の導入は、そのための大切な一歩になるのではないでしょうか。
 
◆4件目の「文化の担い手への支援について」です。
 大垣演劇鑑賞会入会以来、数多くの舞台を大垣で観てまいりました。その中で忘れられない光景があります。1995年「喜劇・キュリー夫人」公演のとき、スイトピアセンター・アートギャラリーで、黒柳徹子さんが一般のお客様に交じって展覧会を鑑賞されていました。しかも、そのお姿は舞台衣装のキュリー夫人のままでした。舞台の人物が現実の空間に降りてきたような、不思議でぜいたくな時間でした。
 また、劇団民藝の「根岸庵律女」も忘れがたい作品です。正岡子規の妹・律の生き方を描いた作品で、そこに描かれるのは、歴史の表舞台に立つ人ではなく、表に立つ人を見えないところで支える人の姿です。文化も、公共も、地域社会も、本当は名もなき支えによって成り立っているのではないでしょうか。演劇の魅力は、単に物語を楽しむことだけではありません。登場人物の生き方に触れ、自分とは違う人生を想像し、人の痛みや喜びに心を寄せることができる。そこに、演劇の大きな力があると思います。
 文化は、多くの方の地道な活動の積み重ねによって地域に根を張ります。今回、大垣演劇鑑賞会は50年の歴史に幕を下ろします。最後の公演は、6月21日、前進座の「さんしょう太夫」と伺っております。前進座は、「前に進む」と書きます。解散は大変残念ですが、だからこそ私たちは、大垣の文化をどう次につないでいくのか、下を見ず前を向いて考えていかなければなりません。国の文化政策においても、演劇鑑賞会のような市民主体の団体は、地域文化の重要な担い手として位置づけられており、その活動を支える環境整備の必要性が示されています。決して、行政が特定の団体を丸抱えすべきだと申し上げているわけではありません。しかし、地域文化の担い手が孤立しないよう、相談できる場をつくり、必要な後押しを行うことは、行政が担うべき大切な環境整備であると考えます。また、文化行政は、教育委員会の中だけで完結するものではないと考えます。文化活動は、市民の学びや生きがいであると同時に地域の魅力を高める力を持っています。たとえば、輪中研究会も今年発足50年ですが、これまで輪中文化等の研究と伝承に取り組んでこられました。しかし、そもそも輪中堤を文化財として見るのか、防災施設として見るのかという問題があります。これは、文化、歴史、防災を分けて考えるのではなく、教育と建設部が横断的に取り組まなければならない事例のひとつだと思います。だからこそ、文化行政を教育分野だけの課題として捉えるのではなく、まちづくり、観光、関係人口づくりなど横断的な支援体制を、今後ぜひ検討していただきたいと思います。
 数年前から始まった大垣ジャズフェスティバル、昨年から始まった大垣アニメ文化祭は、大変興味深い取り組みです。多くの来場者でにぎわい、県内外からも多くの方が訪れたと伺っております。これは単なるイベントにとどまらず、大垣を訪れるきっかけとなり、関係人口づくりにもつながる可能性があります。だからこそ、こうした新しい文化の芽についても、教育と経済が継続性を持って育てていくことが大切です。
 また、今年も大垣音楽祭が開催されました。30年前に始まった当初は、国際的なヴァイオリニスト久保陽子さんをはじめとした多くの一流演奏家を大垣に招くだけでなく、中高生や音楽愛好家が直接レッスンを受けられる、大変ぜいたくな企画でした。担当課職員である我々は音楽に関して素人ですから、大垣市音楽協会さんなどの団体と協力連携して、いつか蒔いた種が花開く日が来ると信じてやっておりました。そして今回、当時中学生で参加していた稻川永示さんが、NHK交響楽団のコントラバス奏者として里帰り公演をされました。第2回音楽祭で新人賞を受賞された五島史誉さんも演奏されました。さらに、今年はシエナ・ウインド・オーケストラが中高生を対象に楽器クリニックを行い、最後にはその中高生たちがプロのオーケストラと一緒に演奏しました。その姿を見て、30年前のあの頃を思い出し、鳥肌が立ちました。
 文化の種は、蒔いたその年に花開くとは限りません。10年後、20年後、30年後に、花を咲かせることがあります。だからこそ、文化への投資は、単年度の費用対効果だけでは測れません。大切なのは、始めることだけではなく、続けられるようにすることです。これは、大垣演劇鑑賞会の解散から、私たちが学ぶべき大きな教訓だと思います。
 私は、令和という時代は、白でもなければ、グレイ一色でもないと思っています。便利さだけを見れば、スマートフォンひとつで手続きができ、情報も瞬時に届く明るい時代です。しかし一方で、希望と不安、便利さと孤立、つながりと分断、技術の進歩と人間関係の希薄化が同時に存在している現実があります。私は、そうした令和を、いわば「まだら色」の時代だと感じています。
 問題は、そのまだら色を、これからどのような色にしていくのかです。野中郁次郎氏の名著『失敗の本質』は、先の戦争における日本軍の組織的な失敗の構造を、多角的に分析したものですが、読むたびに感じるのは、日本人には危機に直面したとき、「起きては困ることは、起こらないと思うことにする」という悪い癖があるのではないか、ということです。見たくない現実を見ない。都合の悪い兆しを先送りする。問題が表面化するまで、本気で向き合わない。そうした姿勢が、失敗につながっていくのだと思います。これはまちづくりにおいても同じです。
 だからこそ、まだら色を、より明るい色に変えていくためには、課題にきちんと目を向ける必要があります。過去の失敗に学び、起きてほしくないことほど、起こり得るものとして考える。そのうえで、今のうちから手を打つことが、これから求められる姿勢ではないでしょうか。
 文学座の『女の一生』。主人公の布引けいは、戦争で何もかも失います。そこから「なにくそ」と立ちあがるとき、時代や戦争のせいにするのではなく、「誰が選んだのでもない。自分が選んだ人生だ」と毅然として言う場面があります。この言葉は、何十年もの間、私の心に深く残っています。
 人生も、まちづくりも、誰かに与えられるものではありません。すべてが思い通りになるわけではなく、時代の制約も、財政の制約も、そしてさまざまな困難もあります。大垣というまちの未来もまた、誰かが決めてくれるものではありません。私たち一人ひとりが自分事として受け止め、一つひとつ選び取っていくものだと思います。『さんしょう太夫』の物語で、安寿が弟・厨子王のために道を開いたように、今を生きる私たちも、次の世代のために道を整え、前へ進んでいく、その先に、明るい色の未来があるのだと信じています。以上で私の質問を終わります。



 

記事一覧

コンテンツを表示するにはJavaScriptを有効にしてください。