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令和7年9月議会(一般質問)

2025年9月12日金曜日活動記録

▼9月8日(月)、大垣市議会にて一般質問に登壇させていただきました。毎回、長文で恐縮ですが、全文を掲載させていただきます。
 ▼今回は、執行部の答弁を受けての発言をたくさん考えていたのですが、45分間の制限時間のなかでは時間が足りなくなってしまったため、かなり端折った発言となっております。ご了承願います。


【今回の一般質問】
・地方創生2.0と水の都おおがき創生総合戦略のアップデートについて
・民生委員制度の課題と今後の展望について
・さわやかみまもりEyeについて
・応急手当普及員の活用について


【バックナンバー】
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[一般質問 一回目登壇]

 
自民党緑風会の種田昌克でございます。
 最近、ナッジ理論という言葉をよく耳にいたします。小さな仕掛けで人を自然によい方向へ導くという考え方です。例えば、コンビニのレジ横にお菓子やチョコが並んでいて、ついでにどうぞと誘ってきます。あるいは、スーパーのレジ前に本日のお買い得とか、お買い忘れありませんかと書いてある。買うつもりはなかったのに、つい手が伸びてしまうといった経験は皆さんもあるのではないでしょうか。人間というのは、ほんの小さな後押しで行動が変わるものだと実感いたします。最近では、ここ大垣市役所本庁舎でもナッジが使われています。既にナッジのとりこになっている方もいらっしゃるかもしれません。本日、ここまで階段で上がって来られた方もおられると思いますが、この8階まで大体180段ありまして、およそ18キロカロリーを消費できるそうです。階段には、気持ちいい汗流そうよ、元気な体は階段から、頑張れ私もう一歩といったステッカーが貼られており、皆さんの健康や体型をナッジしようというわけです。おかげで私も気がつけば階段を使うようになり、気がつけば健康づくりに役立っています。ほんの小さな後押しが人を動かす、その実例であります。このように、日々の暮らしでは小さな後押しが私たちの一歩を変えてくれます。では、地域づくりにおいて、その一歩を導くものは何でしょうか。それは、まちの未来を示す地図だと考えます。かつて伊能忠敬は55歳のときに日本地図を作ろうと思い立ちました。忠敬が作った地図は明治維新後、近代日本の国づくりに大いに役立ち、近代国家形成の基盤を築いたことは皆さん御承知のとおりです。旅行に地図がなければ迷ってしまいますし、行きたい場所が載っていなければ役に立ちません。国が示そうとしている地方版総合戦略の見直しも、大垣の未来を描くための新しい地図に当たります。そこに市民の声をどう書き込むかが大切だと考えます。しかし、地図だけあっても歩く人がいなければ前に進みません。その道を歩むのは地域で活動する人々です。自治会はもちろんですが、現在、高齢化と担い手不足に直面する民生委員、これまで20年以上にわたって地域を見守ってきた、さわやかみまもりEyeの皆さん、そしてもう一つ、人の命を救う力を次世代に伝える消防団や応急手当普及員の存在です。本日は四つのテーマを取り上げます。水の都おおがき創生総合戦略のアップデート、民生委員の担い手確保、さわやかみまもりEyeのこれから、そして、応急手当普及員の活用です。未来の地図をどう描くのか、その地図を歩む仲間をどう確保し、どう支えていくのか。そして、命を守るボランティアをどう生かすのか。これらは一見別々の課題ですが、実は一本の道でつながっております。私も伊能忠敬と同じく、現在55歳であります。本日は、今後の大垣市の未来に向けた地図づくりについて、市のお考えを伺いながら議論を深めてまいりたいと思います。
 それでは、通告に従いまして、4件について質問させていただきたいと思います。
 
▼1件目。「地方創生2.0と水の都おおがき創生総合戦略のアップデートについて」
 昨晩、石破総理が辞任を表明されました。記者会見では、地方創生は道半ばであり、これからも新しい地方から新しい日本を築いていきたいとの思いを語られました。その志は必ずや次の政権に引き継がれるものと考えております。さて、その地方創生についてであります。6月13日には、地方創生2.0の基本構想が内閣より発表されております。国は2025年中に新たな総合戦略を策定するとしており、地方自治体に対しても、地域の多様なステークホルダーと共に地方版総合戦略の見直しを行うことを求めています。本市も例外ではなく、この動きに的確に対応していく必要があると考えます。思い返せば10年前に、まち・ひと・しごと創生法が制定され、政府関係機関の地方移転や地方創生交付金の活用を通じて、全国各地で様々な取組が行われてきました。一定の成果として多くの好事例が生まれたことは事実です。しかしながら、これが普遍化せず、人口減少や東京圏への一極集中を変えるまでには至りませんでした。なぜ好事例の普遍化が進まなかったのか。その背景には、国、都道府県、市町村という縦のつながりに偏り、横のつながりや地域間連携が十分でなかったこと、また、若者や女性の声を十分に反映できなかったことがあると指摘されています。とりわけ地方から首都圏へ転出した若者からは、地域におけるアンコンシャスバイアスや、やりがいを感じにくい職場環境を理由に挙げる声も多く聞かれます。ちなみに、アンコンシャスバイアスは知らないうちに思い込んでしまうこと。ナッジは知らないうちにいい方向に沿って誘導する工夫のことですが、どちらも人間の意思決定が必ずしも合理的でなく、無意識の影響を強く受けるという意味では共通点があります。さて、地方創生2.0は、人口減少を単に食い止める発想にとどまらず、多様な価値観を持つ国民一人一人が地方においても自己実現を果たせる社会を築くことを目指しています。都市と地方の二項対立ではなく、相互につながり高め合う関係をつくり、全ての人に安心と希望を届ける、それが地方創生2.0の基本理念です。本市は令和6年3月、第2期総合戦略の終期を1年前倒しし、デジタル技術の利活用を盛り込んだ第3期水の都おおがき創生総合戦略を策定されました。この対応の早さは高く評価できます。しかし、基本構想が発表となった地方創生2.0とどのように整合させるのか、そして、まちの魅力を補い、強みを伸ばすにはどうすればよいのかといった戦略的視点が求められています。そこで、以下4点について伺います。
 1、国との整合性について。国の地方創生2.0は多様な地域コミュニティーの活力を引き出し、民の力を最大限に発揮することを重視しています。本市の第3期総合戦略を今後策定される国の新たな戦略とどのように整合させていくお考えでしょうか。単に国の方針を待つのではなく、大垣の歴史や文化、交通の利便性、人材といった強みを前面に打ち出すべきと考えますが、いかがでしょうか。2、数値目標と検証体制について。第3期戦略では2060年に人口15万人を維持という目標を掲げています。しかし、自然減、社会減が進む中、市民の間にはその実現性への不安があると思います。今後は単なる人口規模の維持ではなく、若者や女性がここで暮らしたいと思える魅力を育むことが重要です。そのためには人口維持の目標だけでなく、市民が「大都市よりも大垣市」と誇りを持ち、安心して暮らせるかどうかを測る幸福度や生活満足度といった質的な指標の導入が必要ではないでしょうか。市として数値目標や検証体制をどのように強化し、進捗をどのように検証、改善されていくのか。また、RESAS等の客観的データ分析をどのように活用されるのかについて伺います。3、多様なステークホルダーの参画について。戦略の見直しに当たっては、地域の多様なステークホルダーとの協働が強調されています。本市においても企業や教育機関、NPO、市民団体に加え、若者や子育て世代、高齢者の声を反映させる仕組みが不可欠です。これまで一部の有権者や団体に偏る傾向があったやもしれませんが、今後どのように幅広い参画を確保していかれるのかを伺います。4、若者と女性の流出防止について。これまでの地方創生では、人口減少を食い止めることが強調され過ぎた結果、自治体間での人口の奪い合いに陥り、若者や女性の転出を防ぐ本質的な対策が十分でなかったとの指摘があります。実際に首都圏へ転出した若者からは、地域に残るアンコンシャスバイアスや、やりがいを感じにくい職場環境が理由として挙げられています。本市として、若者や女性がここで暮らしたい、ここで働きたいと思えるよう魅力ある職場の創出、結婚、出産、子育てを支える環境整備、男女共同参画の推進や意識改革などをどのように戦略に位置づけ、強化していかれるのかを伺います。以上のように、本市が取り組むべき地方創生は、単なる人口維持や数値目標の達成にとどまらず、市民一人一人が「大都市よりも大垣市」と心から感じ、誇りを持って暮らし続けられる社会を築くことにあります。国の地方創生2.0との整合を図りつつも、大垣市ならではの強みを前面に押し出し、若者や女性をはじめ、多様な人々が挑戦し、自己実現を果たせるまちをつくること。それこそが未来を担う世代への最大の責任であると考えます。ぜひ明確な御所見を賜りますようお願い申し上げます。
 
▼2件目。「民生委員制度の課題と今後の展望について」
 今年は民生委員の改選の年でありますが、本市ではこれまで改選で欠員を出すことなく全ての委員が推薦され、任用されてきました。これは関係者の皆様の熱意と尽力の結果であり、誇るべきことであります。地域に支え合いの精神が根づいていることを示すものであり、心から敬意を表する次第です。しかし、その一方で現場では限界が迫っています。多くの自治会長が次の担い手探しに四苦八苦し、疲弊しきっているというのが実情です。候補者が見つからない、お願いできる人がいないという声は、もはや例外ではなく常態化し、候補者探しに奔走して、辛うじて定員を満たしているという地域も少なくありません。実際に、体力に自信がない、現役で働いているから無理だと断られるケースが相次いでおり、担い手不足は避けられない現実となっております。全国的にも欠員率は慢性的に高止まりし、本市も決して安泰ではありません。民生委員の平均年齢は既に67歳前後に達しており、このままでは近い将来、確実に担い手不足が顕在化します。そのときに、制度が機能不全に陥り、独居高齢者の見守り、子育て世帯の支援、生活困窮者への相談といった地域福祉の根幹機能が途絶することになります。つまり、民生委員制度が立ち行かなくなるということは、地域福祉に大きな空白が生じ、市民生活そのものが直撃を受けるということを意味します。これはもはや抽象的な懸念ではなく、今手を打たなければ必ず現実となる未来であります。そこで、3点お尋ねします。
 1、若い世代や就労世代の参画を可能にする仕組みづくりについて。従来の制度は、高齢で時間に余裕のある世代に依存してきました。しかし、今や定年延長や共働き世帯の増加により、社会全体のライフスタイルは大きく変化しています。オンラインでの会議参加、役割分担制度、短時間関与の仕組みなど、柔軟な制度設計を急がなければなりません。本市としてどのように取り組んでいくかを伺います。2、市民への理解促進と将来の担い手育成について。民生委員の役割が分からないから断るという声が後を絶ちません。このまま放置すれば次世代の担い手は生まれません。学校教育で地域福祉を学ぶ機会を設ける、地域講座で活動を紹介する、広報やSNSで日常を発信するなど、未来の候補者に自分もできると思ってもらう仕組みが欠かせません。市はどのような具体策を講じるのかお聞きします。3、活動負担の軽減と役割分担について。民生委員は、高齢者見守り、子育て支援、地域把握など多岐にわたる活動を担い、1人にかかる負担は既に限界に達しています。この重さが新たな担い手を遠ざける最大の要因です。全国では、民生委員協力員制度による役割分担やICT活用による効率化、行政依頼業務の整理など、具体的な負担軽減が進められています。本市も制度崩壊と地域福祉の空白を避けるために、どのような策を講じるのかを伺います。
 
▼3件目。「さわやかみまもりEyeについて」
 平成16年5月にスタートしたさわやかみまもりEyeは、地域の見守り体制を強化する画期的な取組として、市民や団体、行政が一体となって安全・安心のまちづくりを進めてきました。さわやかみまもりEyeのEyeには、四つの意味があります。一つ目は、文字どおり目です。地域の皆さんの活動は、犯罪をしようとする者が嫌がる地域の目となります。二つ目は、挨拶のアイ。挨拶により地域での交流が生まれます。三つ目は、愛情のアイ。地域を愛する心を育みます。四つ目は、本市の市民憲章にある市民相互の助け合いのアイです。さわやかみまもりEyeは約20年の間に市民の安全と地域のつながりを守る大きな役割を果たしてきました。防犯パトロール、登下校時の児童見守り、高齢者の安否確認など、多岐にわたる活動が展開され、刑法犯認知件数の減少にも一定の成果を上げてきましたが、先日の新聞によりますと、県内の今年上半期における空き巣などの住宅侵入等の被害は311件で全国ワースト10位だそうです。今こそ地域の底力が試されていると思いますし、今こそ活動の検証と今後の方向性を議論すべき時期であると考えます。
 そこで、1、登録人数とこれまでの成果について、2、今後の新たな取組について、以上2点お尋ねします。
 
▼4件目。「応急手当普及員の活用について」
 明日9月9日は救急の日ですが、応急手当普及員とは消防機関が行う講習を受けて認定される資格で、地域や職場で心肺蘇生法やAEDの使用、止血などの応急手当てを指導できる人のことを言います。消防組合が実施する通常3日間、計24時間の応急手当普及員講習を終了することで資格が与えられ、資格を持った人は市民向けに普通救命講習などを開催し、インストラクターとして地域や学校、会社などにおいて救命処置の普及啓発に取り組むことができます。私も2年前に友人と一緒に応急手当普及員の資格を取得し、昨年は普通救命講習を地区センターで開催いたしました。3時間の講習におよそ30人の方が参加してくださいました。その日参加された方からは、こんな感想をいただきました。胸骨圧迫を人形で実際に試したとき、たった2分間続けただけで腕が疲れきってしまいました。それでも、あと数分で救急隊が到着する、その間は自分が続けるしかない、自分がやらなければこの人は死んでしまうと思えばやり続けることができると感じました。そして、応急手当は特別な人だけが担うものではなく、誰もが担い手になれると実感しました。こうした前向きな声をいただき、私自身もやってよかったなと強く感じたところでございます。また、参加者の中で早速、応急手当普及員の資格を取得された方もおられました。その方は先日、輪之内町地内のショッピングセンターの駐車場で倒れている女性を発見。顔面蒼白で呼吸を確認できなかったのですが、すぐさま心肺蘇生を実施。半ズボン姿だったのでアスファルトで膝が焼けるほど熱かったそうですが、倒れていた女性は約40秒後に見事息を吹き返し、救急隊に引き継ぐことができたそうです。こうした市民の力を育てるために、大垣消防組合では毎年8月に応急手当普及員の養成講座を開催しております。これまでに多くの市民が資格を取得し、普通救命講習の指導ができる市民インストラクターが数多く誕生しているとお聞きしております。大変意義深い取組であると高く評価いたします。
 そこで2点、1、普通救命講習の実施実績について、2、応急手当普及員の資格取得者数と現在の活用状況について、お尋ねいたします。近年、夏休みの学校プールを開放することが減り、それに伴って数年前までは1学期に保護者と学校で行っていた普通救命講習の開催数も減っているとお聞きします。しかし、学校のプール開放がなくても、夏休みには川や海で遊ぶ子供は少なくありません。水難事故が多い夏前には必ず救命講習を行い、応急手当普及員を学校へ派遣することで、保護者も子供たちも、自分や仲間の命を守る技術を身につけられるようにするべきです。また、各学校に応急手当普及員の資格を持った先生を1人でも配置すれば、学校内で先生や保護者、児童生徒を対象にした講習を柔軟に行えると思いますが、いかがでしょうか。それと、小中学校における普通救命講習の開催数についてもお答えください。
 以上、1回目の質問といたします。
 
【答弁】
[市長]
・大垣市は人口減少対策として「水の都おおがき創生総合戦略」を継続的に推進中。
・現在はデジタル技術を取り入れた第3期戦略を展開している。
・国の「地方創生2.0」と市の基本目標(子育て・活力・安全安心)は方向性が一致。
・国の新戦略が策定され次第、市の戦略との整合性を精査し見直しを検討。
・市は三つの基本目標に対応した数値目標を設定し、推進委員会でPDCAを実施。
・国勢調査、RESAS、EBPM、AI分析などを活用し、政策立案の精度を高めている。
・市民アンケート、子ども意見交換会、スマホモニターなどで幅広い民意を反映。
・PPP指針の策定や官民連携部署の設置など、企業との協働体制を強化。
・特に20代の転出超過を踏まえ、女性に選ばれるまちづくりや働き方改革に重点。
・今後も多様な主体の意見を取り入れながら、総合戦略を継続的に強化していく方針。
 
[健康福祉部長]
・民生委員は地域福祉の要として活動しており、大垣市は全国平均より高い充足率を維持してきたが、今後は担い手不足が懸念されている。
・若い世代・就労世代が参加しやすいよう、勤務先への協力依頼や会議時間の見直し、ICT活用など柔軟な活動環境を整備している。
・市民への理解促進のため、広報誌配布・イベントでの紹介・テレビ放送・大学での啓発などを実施し、将来の担い手育成を進めている。
・活動負担軽減として、署名業務の見直しや、複雑な相談への対応を「よりそい支援窓口」がサポートする仕組みを整えている。
・今後も民生委員の活動環境を改善しつつ、担い手確保に向けた取り組みを継続する方針である。
 
[危機管理部長兼危機管理監]
・大垣市は第4次防犯基本計画のもと、防犯ボランティア「さわやかみまもりEye」が通学路見守りやパトロールで地域安全に貢献している。
・令和6年8月末時点で1,866人が登録し、市は帽子・ベスト支給や保険加入などで活動を支援している。
・新たに北地区の団体と連携し、市貸与の青色回転灯車両を使った防犯パトロールを開始する。
・応急手当普及員は普通救命講習を開催できる指導者で、市内では年間67回・1,105人が受講し、普及員は69人が資格を保有。
・普及員は事業所・学校等で講習を担い、地域防災力向上に寄与し、市は今後も関係機関と連携して防犯・救命体制を強化していく。
 
[一般質問 二回目登壇]
ただいまは、それぞれに御答弁ありがとうございました。
 
〇地方創生2.0の基本構想は、6月13日に閣議決定されました。その3日後の6月16日には、内閣官房と内閣府から、地方版総合戦略の検証・見直しに早期に着手することと明記した通知が地方自治体に発出されております。これは、地方自治法第245条の4に基づく技術的助言であり、国の強い要請であります。内閣が替わることで基本構想も見直されるのではないかと思われる方もおられるかもしれません。しかし、既に閣議決定された基本構想は撤回されない限り有効であり、地方創生は国の一丁目一番地の政策として位置づけられると思っております。本市としましても、今後の国の動向を注視しつつ、的確に情報を収集し、着実に取組を進めていただきたいと思います。
 
〇「民生委員制度の課題と今後の展望について」ですが、
民生委員制度を取り巻く環境は厳しさを増し、成り手不足は深刻化しております。今回の改選に当たり、町内を回って候補者を探しましたが、多くの方から、時間が取れない、責任が重いといった声が寄せられました。特に強く感じたのは、推薦活動の実務がほぼ自治会長に一任されている現状です。説明に回る精神的、時間的な負担は非常に重く、それがもう自治会長を続けたくないという声に直結しています。つまり、制度を維持しようとすればするほど地域の自治組織そのものが疲弊する、言わば共倒れの構図が生まれつつあるのではないでしょうか。こうした状況は、地域の努力だけでは打開が難しく、行政が主体的に関わり、制度自体を現代に合った柔軟な形に見直していくことが不可欠です。全国で約1万5,000人もの欠員が出ている現状を踏まえれば、いきなり3年間フル活動ではなく、できる範囲で関わる形を認め、担い手の間口を広げる工夫が必要ではないでしょうか。
 
〇「さわやかみまもりEyeについて」ですが、
民生委員とさわやかみまもりEyeは、制度に基づく活動と市民独自の活動という違いはありますが、いずれも地域の安全・安心を支える重要な取組です。共通の課題は担い手不足と活動の継続性であり、両者を相互に補完させながら市が積極的に支援することが、持続可能な地域福祉、防犯体制につながると考えます。20年前と違い、現在は時代も変わって、スマートフォンやSNSの普及により効率的かつ多様な広報や交流が可能です。公式LINEやグループチャットを活用した情報発信、活動の様子を動画で配信するなどの方法があります。さらに、ボランティア活動を可視化するアプリを使えば、活動記録の蓄積・共有ができ、ありがとうメッセージやバッジが届くことで、参加者のモチベーションを高める工夫も可能です。こうした小さな仕掛けが市民の自然な参加を促し、活動の裾野を広げることにつながると思います。ぜひ顔の見える交流活動の広がりのあるさわやかみまもりEyeにしていただきたいと思います。
 赤塚不二夫の「天才バカボン」という漫画に、レレレのおじさんというキャラクターが出てきますが、レレレのおじさんが地域に果たしていた役割というのはすごく大きいと思います。毎日掃除で町を清潔にしてくれていて、お出かけですかと言って声かけすることで、防犯や見守りにもつながっています。つまり、レレレのおじさんは、地域の緩やかなつながりを支える潤滑油のような存在でもあり、みんなで地域を守る共同体意識の象徴でもあると思います。地域でこういう人をつくっていかなければならないと思いますが、高齢化や若者世代の参加不足といった課題が顕在化しているのも事実です。五木寛之の小説「青春の門」の舞台で有名な福岡県香春町の採銅地区では、地域の大人をカード化するというユニークな取組が成果を上げています。地域で活動する大人をトレーディングカードにして、子供たちが集めたり交換できる仕組みをつくったところ、カードの本人に会いたいという気持ちが地域イベントの参加につながり、世代を超えた交流やボランティア活動の広がりに結びついたと報告されています。活動を見える化し、子供世代が楽しめる形に変換する点で、ナッジ理論を応用した先進的な事例と言えると思います。昔はレレレのおじさんのように子供に話しかけてくれる地域のおじさんがいっぱいおられました。もし、そうしたおじさんのカードがあれば最強のカードとして人気が出るに違いはありません。本市においても、さわやかみまもりEyeや消防団や地域で活躍するボランティアに新たな仕掛けを導入していただきたいと願っております。
 以上、民生委員とさわやかみまもりEyeという地域に不可欠な二つのボランティア活動を取り上げてきました。しかし、自治会やPTA、消防団、子供会といった団体についても市民に十分理解されているとは言い難く、担い手不足は深刻化しております。例えばパソコンで自治会と入力すると、自治会退会、自治会入らない、自治会解散と表示されます。民生委員と入力すると民生委員成り手不足、PTAと入力するとPTA嫌われる理由、PTA入らないとどうなる、PTA何をするといった候補が並びます。これは多くの市民が疑問や不安を抱き、検索していることの表れです。ここで注目したいのが、昨年開催されたOut of KidZania inおおがきです。子供たちが市内の企業や団体の仕事を体験できるこのイベントは、多くの来場者を集め、大きな成功を収めました。体験を通じて知る、楽しむ、参加するにつながった点に、市民参加を促す仕掛けのお手本事例とみます。この実績を踏まえ、地域活動を対象にした大人版キッザニアを開催してはどうかと考えます。地域デビューやボランティア活動の第一歩を踏み出すための取組です。自治会や民生委員などの団体から直接活動のやりがいや経験を聞いたり、ロールプレイを体験したりする場を設けることで、市民が楽しみながら地域活動を知り、参加へのきっかけをつかめるのではないでしょうか。さらに、活動紹介の映像を会場で流すことで理解を深められると考えますが、いかがでしょうか。
 
〇残り2分30秒ありますので、もう少しだけ述べさせていただきます。「成瀬は天下を取りにいく」という小説を御存じですか。本作は2024年の本屋大賞受賞作で、その作者である滋賀県大津市在住の宮島未奈さんの講演を拝聴する機会がありました。物語は大津市を舞台に、主人公の少女、成瀬あかりの奇想天外な奮闘を描いた青春小説です。強烈なキャラクターの魅力に加え、地域に根差した舞台設定が多くの読者の共感を呼んでおります。スーパー平和堂や閉店予定の西武百貨店大津店といった実在の場所、さらには江州音頭の描写なども登場し、地方ならではのぬくもりを感じさせます。これから読まれる方は、ぜひ心してページを開いていただきたいと思います。その魅力に心臓を打ち抜かれるかもしれません。宮島さん自身は、まちおこしのために書いたのではないと語られておりますが、結果として作品は人を呼び込み、地域の魅力を発信する力となりました。文学が持つ不思議な力、地域資源としての力を実感させられます。作品は、「島崎、私はこの夏を西武に捧げようと思う」というせりふで始まります。これに触れて宮島さんは、もし、私はこの夏を地方創生に捧げようと思うなんて人に出会ったら大分怪しいですよねと語っておられました。確かに声高に掲げるほど、かえってうさんくさく響くのかもしれません。地方創生は国の最重要政策の一つに位置づけられていますが、だからといって、皆さんぜひ捧げましょうと声を張り上げるつもりはありません。むしろ、行政がほんの小さな後押しをすることで、気がつけば人が集まり、気がつけば地域が元気になっていた、そんな自然体の地方共生を共創の力で目指していただければと願っております。
 本日は、いろんな思いを述べましたが、以上をもちまして、私の質問を締めくくらせていただきます。ありがとうございました。


 

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