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その場しのぎの男たち

2024年5月21日火曜日雑感

▼今日は金山の名古屋市民会館で、劇団東京ヴォードヴィルショー公演「その場しのぎの男たち」という舞台を見てきました。脚本は三谷幸喜、約30年前に書かれた舞台です。名古屋演劇鑑賞会の例会なのですが、まったく予習なしでどういう芝居を観るのかも知らずに金山へ行きました。
▼物語の舞台は明治24年の滋賀県大津市。訪日中のロシア皇太子ニコライが沿道を警備していた巡査に切りつけられるところから物語は始まりました。そうです、あの有名な「大津事件」がモチーフの舞台であるとすぐにわかりました。事件が起きたのは松方正義が総理になったわずか5日目のこと。そして国際社会へ仲間入りをしたばかりの日本にとってはまさに“青天の霹靂”と言える大ピンチ。治療中の皇太子へ謝罪に向かうも、治療中の皇太子への面会は叶わず門前払いに遭ってしまう。総理大臣をはじめ内閣の面々はなんとか善後策を講じようとするが、いずれも“その場しのぎ”のものばかり。“切れ者”と評される農商務大臣の陸奥宗光(佐藤B作)が協議に加わるも、提案はどこか的外れで五十歩百歩というありさま。駆けつけた元老・伊藤博文も、思わず「打つ手打つ手が面白いように外れていくね」ともらす始末。謝ることもできず、開き直れば開戦…という危機の中、事態は混迷の一途をたどります。明治政府の最大の危機に直面した松方総理とその仲間たちは、日本を救えるのか!?男たちの夜は更けていくといった抱腹絶倒の舞台でした。
▼この舞台は30年前に書かれたものですが、犯人の津田三蔵がいうセリフ「お前ら、本当に国のことを考えているのか!」確かに、皇太子に切りつけた津田三蔵は許されるものではありません。しかし、ロシアがわが国を攻撃してくるのではないかといった愛国心に似た感情は今の時代よりもしかしたら強かったのかも知れません。あくまでほとんど脚色されたコメディ舞台ということを忘れてはなりませんが、中国やロシア、北朝鮮の動きにわれわれはもっと関心を持たなければならないと思います。
▼また、残念なのがこの舞台に登場する政治家(伊藤博文、陸奥宗光、西郷従道、青木周蔵、後藤象二郎)が本当に保身ばかりでこの重大事においてどこかずれているということ。まったく明治の偉大な政治家に失礼な描き方なのですが、これはまさしく令和の政治家そのもののを写しているとしか思えないのです。最高に面白いコメディで大笑いした後、ふと我に返り、反面教師としようと心に誓いました。
 

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