夜間中学を知っていますか?
2022年10月7日金曜日まちのこと
▼三重県に県立夜間中学ができることになりました。3年後の2025年にも開校される予定だそうです。公立夜間中学の設置は中部地方でははじめてです、岐阜県でも、8月から9月にかけて「夜間中学でまなびたいという方はいませんか?」というアンケート(下の写真)を配布しニーズ調査をしておりました。アンケート結果が待たれるところですが、このアンケート自体をあまり目にしなかったので認知度は低い気がしています。
▼1993年に『学校』という映画が公開されました。様々な背景を抱えた夜間中学生たちの学びあいを描き、その教育力や存在意義を映し出した感動の山田洋次監督の名作です。かつては、戦後の混乱期に家計を助けるために働かざるを得なかった子どもたちを救済するために設置された夜間中学ですが、2015 年には、不登校のまま形式的に中学校を卒業した人の学び直しの機会として、夜間中学への再入学を認める方針を文部科学省が示しました。また、2018年には全都道府県に少なくとも1校の夜間中学設置を要請しました。
私は30歳のときに、名城大学法学部(夜間)に入学し、そこで、自分より何十歳も年上の同級生たちと一緒に学ぶ機会を得ることができました。その方々は本当に向学心旺盛で、昼間の大学生にはあまりない学べることのありがたさと教えていただくことができました。
▼さて、夜間中学には「社会教育」や「生涯教育」の一環として学びだい人も通っています。夜間中学で9教科を学び、修学旅行へ行き、運動会やクラブ活動をする。それぞれが自分の可能性を発見し、互いに学びあう教育を受けています。それは、自分が自分になるための学びといえます。多くの生徒が「自分はこんなことができるんだ」「自分らしい生き方で良いんだ」と目を輝かせ、それぞれが人生の主人公になっていると感じます。
▼山本悦子さんの書かれた「夜間中学へようこそ」(岩崎書店刊)の中で、夜間中学に通うおばあちゃんが、自分の名前の意味を知るシーンはとても印象的です。漢字の意味を知って、親の愛を知って喜び、そしてずっと書きたくても書けなかった、孫の名前、優菜の字を一生懸命覚えようとするところは胸がギュッとなります。
▼現在、夜間中学は全国8都道府県に設置されているのみで、残り39都道府県にはありません。映画「学校」が公開されてから早や30年が経とうとしています。戦後の混乱期を生きた子どもたちは、すでにずいぶんとご高齢になってしまいました。もう少し早く取り組むことができなかったのか残念な気持ちもあります。しかし、まだまだ、学びなおしたいという気持ちを持っている方は多いと感じています。「なぜ自分たちの地域にはないのか」「なくてよいのか」といった議論が必要ではないでしょうか。