「給特法」残業代訴訟判決
2022年9月14日水曜日雑感
▼法律によって残業代を出さないことが決められている仕事は何でしょう?と聞かれて直ぐに答えられますか。答えは「学校の先生」です。
▼そうしたなか、教員の時間外労働に残業代が支払われないのは違法だとして、埼玉県の公立小学校教員が県に未払い賃金として約240万円の支払いを求めましたが、東京高裁が8月25日、一審に続いて原告の請求を退けました。
▼学校で教員不足が問題となっています。文部科学省は、その理由として、「過労死ライン」を超える教員の長時間労働の実態が広く知られるようになり、教職が敬遠されている可能性があるとみています。
▼また、学校の先生は、「給特法(教職員給与特措法)」とよばれる法律により、公立学校の教員には月給の4%を「教職調整額」として上乗せして払う代わりに、休日や時間外の勤務に対して手当を出さないことが定められています。給特法は、教材研究など自発的な業務が多く、夏休みなど長期の学校休業期間がある教員の勤務の特殊性を踏まえて1971年に制定されました。一方、教員の過重労働を抑制する観点から、①生徒の実習、②学校行事、③職員会議、④非常災害などのやむをえない場合、の「超勤4項目」に限ると定めています。これらを除いて、原則として残業を命じてはならないとされているのです。
時代とともに、教員の仕事内容が長時間に及び、次第に複雑化している中で、この規定が不適切だという指摘が相次いでいます。私も実際に小学校PTAとして、頻繁に学校に出入れりして先生方の働く姿を見ておりますが、給特法については見直しをすべきだと考えます。
▼ただし、学校の先生にも労基法は適用されます。給特法が適用除外にしているのは、超過勤務手当を義務づけている「労基法37条」だけです。ですから、「1日8時間、週40時間」の労働時間の上限は有効です。ところが、文科省も自治体も、正規の勤務時間を超えて従事している業務は「教員が勝手に行っている自発的行為」で「労働時間」ではない。だから労基法違反でないとしているのです。
▼いずれにしても、今回の判決は「教師は聖職である」として、聖職なんだから対価が少なくても、やりがいのある使命を果たせと、『やりがい搾取』を容認するような内容です。志ある学校の先生方のためにも、未来を担う子どもたちのためにも、教員の離職を防ぎ、よりよい教育を子どもたちに提供できるようにするために、給特法改正を含めた教員の待遇改善とそのための予算の拡大が必要ではないでしょうか。