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参議院とは何か

2019年7月22日月曜日本棚

第25回参議院選で与党の自民・公明両党が過半数を得て、改選議席の半数を超え、3年前とほぼ同水準の勝利を収めました。しかし、投票率は低調で(史上2度目の50%割れ!)、その理由としては、衆院選のような政権選択の場ではないこと、今回は争点が分かりずらかったことがあるかと思います。つまり、盛り上がりに欠けたわけで、ある新聞記事には「中止になった一軍戦の穴埋めに開かれた二軍戦みたい」と書かれていました。
竹中治堅著『参議院とは何か(中公叢書)』では、参議院が政治過程に及ぼす影響力について、二つの対立する見方を紹介しています。ひとつは参議院に大きな影響力があるとする「強い参議院」論と、もうひとつは参議院に影響力を認めない「カーボンコピー」論です。よくいわれるのが後者のカーボンコピー論ですが、これは、参議院が法案の修正をしたり、法案の成立を拒んだりすることが少なく、「衆議院で採択された法案はそのまま参議院を通るもの」と期待できるので、参議院は政治過程で独自の影響力を発揮していないという見方です。一方で、歴代総理がいかに参議院対策に腐心してきたことも事実で、詳細に書かれています。参議院は決して盲腸ではなく、我が国の政治にとって重要なものだと言えます。「参議院をどう評価するかは、最終的には二院制をどう評価するかという議論に帰着する。一院制を選べば、立法に代表されるような国家の意思決定は迅速になる。一方、二院制を選ぶなら国家の意思決定は遅くなる。国家の意思決定はよりしんちょうなものとなる。一院制を選ぶか、二院制を選ぶか、これは最終的に民主主義をどう考えるかというわれわれ国民一人ひとりの判断に委ねられている問題である。立法とは最終的に国家による国民に対する権力の発動を認めることである。したがって、やはり二院制を維持して、国家による権力に発動には慎重を期したほうがいいのではないか」と筆者は述べています。
▼3年に一度しかない参議院選挙。本書を読むと、第1回参議院選で過半数を獲得できなかった与党自由党党首でもある吉田茂首相がいかに法案をを成立させるか苦労していた(実際に地方税法案を否決された)にはじまり、昭和46年には野党に指示を得た河野謙三が参院議長となり、重要法案を成立させることが難しくなった。新しいところでは、いまからちょうど12年前の第一次安倍政権における自民党の参院選敗北。これにより、ねじれ国会に苦しめられ、福田、麻生と短命政権が続き、平成21(2009)年にはあの民主党政権となっていくわけです。この一連の流れが実に詳細に書かれております。一度、手に取られることをお勧めします。

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