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「石原信雄回顧談」(第2巻)を読む

2019年7月6日土曜日本棚

第二巻は、地方財政制度の成り立ちや変遷などについて、著者の実務経験から語られており非常に興味深い内容でした。ただし、財政制度について知識がないと理解しづらいと思います(私自身が財政制度について詳しくないので、、、)。国庫負担金、国庫補助制度、経常収支率、地方公営企業の会計基準、社会保障財源の確保など非常に詳細に語られております。これほどまでに語ることのできる方は著者以外にはおられないような気がします。
◎興味深かった箇所の要約。
▼【公営企業について】
病院事業で言えば、民間と公立の両方があり、本来設置義務があるわけではない。その地方公共団体の選択でやること。よって、病院会計など地方公営企業は独立採算によるべきで、赤字が出ても地方交付税で補填することは想定していなかった。ところが、社会労働系の議員は「現場が困っているのだから何とかしてやれ」ということで、公営企業として運営している病院の赤字を一般会計で補填するなり、地方交付税で応援したらどうかという議論が出てきた。
ただ、公営企業は地方団体が企業的な手法で地域住民にサービス提供するもので、その団体の選択でするものであるから、本来は受益者が料金で企業活動を支えるのが建前である。地方の共有財源である地方交付税でサポートすることは前提になっていない。公営企業とはいながら実態が変わってきた。都市の形態変化、社会の成熟化のなかで公営企業の位置づけが変わってきた。
▼それが崩れた理由。かつての田舎は井戸があるため水道事業などやっていなかった。下水道もそう。昔は水道事業は都会だけの事業で、料金をとってやれていた。地方交付税による補填はなかった。しかし、都市化が進むと、地方などでも都市としては下水道の整備は必須となってきて、それを賄う財源として都市計画税を目的税で認め、さらに下水道は道路と同じではないかという議論にまでなった(本来、都市として必要なものは一般会計で対応する)。全国的に下水道整備の必要性が広がってくると、必要な都市施設として少なくとも下水道の雨水を処理する経費は税金で賄うことになって、一般会計からサポートすることが制度として確立した。そして今は普通交付税のなかで下水道経費を一般会計からの繰り出し文に対応させることで計算している。
▼公立病院も同じで、地方団体が病院を運営することは義務制ではない。あくまで選択制。公立病院でも診療報酬の範囲でやりくりすることが当然であったが、地方では過疎化が進み、医師不足が深刻になると、民間病院がない地域が出てくる。その場合、地域医療を確保するために地方団体が病院運営をしなければならなくなる。そこで一定の基準に該当する地方団体が病院を設置した場合は、一般会計で負担する必要に迫られ、いまでは、公立病院事業につちえも一般会計の負担基準をつくり、その負担分を普通交付税で計算している。公共企業会計に対する地方交付税の扱いは、時代の変化と共に変わってきており、地方交付税でサポートする分野が広がってきている。
▼【地方財政制度の完成度について】
政府全体の立場と地方自治の立場の両方を考えた場合に、いまの地方財政制度は落ち着くところに落ち着いた。今の地方交付税制度は、地方と国の役割分担に対応して一応税源配分をするが、独立税だけでいかない部分は地方交付税を地方団体の共通財源として割り振ることとし、その分を法律で特定国税の一定率として決めておく、ただしこれは絶対不変ではなく状況の変化によって変動もあるべしとするものである。日本の国情に合った制度である。

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