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平成生まれの人と60年前の映画を鑑賞~映画「お早よう」

2019年5月20日月曜日雑感

▼大学院の授業の一環で、同級生たちといっしょに小津安二郎監督の映画『お早よう』(1959)を鑑賞しました。この映画は妻が好きな映画で、息子が生まれる前から「こんなかわいい子供が欲しいな」と思いながら何度も観た作品です。しかし今回は“平成生まれ”の同級生たちとこの60年前の作品を鑑賞しました。
▼この作品は、時代が変化していく様を上手く映し出しています。作品の中の子供たちはとても無邪気で元気いっぱい、そしてとてもかわいらしい。平成生まれの彼女たちも「かわいい、かわいい」を連発していました。そして、時代と共に無くなっていた風俗が随所に垣間見ることができます。例えば、小姑と一緒に暮らしていることやご近所全体で子育てをしている環境。話し言葉では「わたくし」「行ってまいります」「ちょいと」「お父さんに言いつけるわよ」など。生活道具としては「おひつ」「下駄」「鼻緒の修理」などがまだあり、ご近所では洗濯機やカラーテレビを買った人がいると話題になる時代です。平成生まれの同級生が驚いていたのは、「他人の玄関をいきなり開けて入ってく」「他人の家の玄関先でタバコをふかす」「押し売りがやってくる」「回覧板を郵便受けではなく、きちんとお隣に声をかけて手渡し」することがあげられていました。また、現代と同じだなあと感じるのは、登場人物がみな「定年後の生活を心配する」ところでしょうか。
▼タイトルにあるとおり「お早よう」という言葉がひとつのキーワードになっています。子どもたちは、父親(笠智衆)に「無駄口ばかりたたくんじゃない」と叱られると、「大人だって、お早よう、こんにちは、いいお天気ですね、と無駄な事ばかり言ってるじゃないか!」と文句を言われます。この辺りは、父親の権威というものが失われてきた時代なのかなと思わずにはいられません。一方で、佐田啓二と久我美子が駅でばったりと会うシーン。「お早よう」「いい天気ですね」と月並みな会話しかかわせない二人。ひたすらこの言葉をホームで交わし合います。いまではあまり見られないような男女の会話じゃありませんか?しかし、お互いに「好きだ」という気持ちがそれで通じ合っていることに観客は気づくはずです。この映画には古き良き時代の空気というものが、タイムカプセルのなかに大事にしまわれています。
▼ところで、私の実家の部屋の壁は土壁なのですが、息子にはそれが珍しいみたいで、先日、スコップで穴を掘って、私の母にしかられていました(笑)。

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