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二つの祖国~大河ドラマ「山河燃ゆ」~

2018年12月18日火曜日本棚

▼大河ドラマ「西郷どん」が最終回を迎えました。来年は「いだてん~東京オリムピック噺~」ということで楽しみにしています。さて、私は数年かけて、ある大河ドラマのDVDをレンタルで借りて観ています。それは、昭和59年放送の「山河燃ゆ」です。当時、中学生であった私はこの作品にはまってしましました。しかし、まだ家にビデオのない時代で何度か見逃してしまった回もあり、長年、もう一度観たいと思っていましたがなぜか再放送もDVD化もされず、ようやく3年前にDVD化が実現したのです。
▼原作は、山崎豊子の「二つの祖国」という作品です。この作品で、山崎は日系アメリカ人が経験した戦争中の苦難や、東京裁判の不公正、不公平さを強く訴えています。しかし原作とドラマとでは登場人物や内容がだいぶ異なっています。私は原作とドラマは別の作品であると割り切っていますが、どちらかというとドラマの方が気に入っています(山崎さんごめんなさい)。
▼当時、このドラマを通じて、私はたくさんの“新しいことば”を知ることができました。それは「リトルトーキョー」「パールハーバーアタック」「マンザナール収容所」「原爆」「東京裁判」「巣鴨プリズン」「東郷茂徳」「清瀬一郎」等です。また、出演者は、松本幸四郎(白鷗)、西田敏行、鶴田浩二、三船敏郎、沢田研二、大原麗子、島田陽子、児玉清など豪華メンバーです。それぞれの登場人物が「もし戦争さえなければ、、、」という人生を歩み、とても考えさせられます。
▼とりわけ、東京裁判でのブレークニー弁護人のこの言葉が、当時の私の胸に響きましたのでご紹介します。「国家の行為である戦争の個人責任を問うことは、法律的に誤りである。なぜならば、国際法は国家に対して適用されるものであって、個人に対してではない。個人による戦争行為という新しい犯罪をこの法廷で裁くのは誤りである。戦争での殺人は罪にならない。それは殺人罪ではない。戦争が合法的だからである。たとえ嫌悪すべき行為でも、犯罪としてその責任は問われない。キッド提督の死が真珠湾攻撃による殺人罪であるならば、我々は広島に原爆を投下したものの名をあげることができる。投下を計画した参謀長の名も承知している。その国の元首の名前も承知している。かれらは殺人罪を意識していたか。してはいまい。われわれもそう思う。それは彼らの戦闘行為が正義で、敵の行為が不正義だからではなく、戦争自体が犯罪ではないからである。何の罪科でいかなる証拠で戦争による殺人が違法なのか。原爆を落とした者がいる。この投下を計画し、その実行を命じ、これを黙認したものがいる。この者たちが裁いているのだ。彼らも殺人者ではないか。
▼三十数年たって再び観て、心に残るシーンは、フィリピン戦線においてアメリカ軍と日本軍に分かれて戦う兄弟(松本幸四郎、西田敏行)のシーンです。当時このシーンはおそろしく感じてまともに画面を見ることができませんでした。それと、東京裁判での「デス・バイ・ハンギング」と冷たく響く裁判長の声です。もうひとつあげるとすれば、三船敏郎がアイロンをかけているシーンと「アイ・ドント・スピーク・イングリシュじゃ!」というところでしょうか(笑)
▼東京裁判についてはいろんなご意見があります。これは後世の人たちや歴史家の見解をこれから長生きしてぜひ聞きたいものです。

山河燃ゆ(NHKアーカイブスHP)
http://www2.nhk.or.jp/archives/tv60bin/detail/index.cgi?das_id=D0009010897_00000
 

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